教えて、うたくんのこと。
へんなの。
目の前のうたくんはこんなにもイジワルなのに、教室にいるときよりも心なしか楽しそうなような……。
「直球だよな。柏木は」
「え?」
「誰も触れてこないところに平気で触れてくる」
「……だって」
「だって?」
「知りたくなったから」
うたくんが、ため息をつく。
けれど表情はさっきより柔らかくなっているように見える。
「俺がアヤノさんのこと避けてることなんて明白だろ。アヤノさん本人は勿論気づいてるし。周りのやつらだってそうだ。わかってて知らないフリしてるだけで」
「……うたくんは皆瀬先生を避けてるの? それで授業出たくないの?」
「ああ」
「どうして、」
どうしてうたくんは先生を避けてるの。
どうしてうたくんは
……先生を名前で呼んでるの?
「別に、柏木だから言わないわけじゃないから」
「へ?」
「そんな落ちこむことないんじゃないの」
「お……落ちこんでないよ……!?」
「嘘ついてもバレバレだっつの」
「……!!」
「ははは」
ああ、そうやってまた、バカにしたように笑う。
「じゃあな、柏木」
そういうと、軽やかな足取りで
いとも簡単に校門を乗り越えてしまった。
――空を飛んだみたい、だった。
「お前は真似すんなよ」