恋花火
玄関から階段と渡り廊下を歩いて裏門に近い方の棟に向かう。
文化系部活動が活動する特別棟。
「・・・遠いなー・・・もう」
なんて文句を言いながら写真部の部室を目指す。
教室から遠くて、めんどくさいな、なんて思った日もあったけど、何だかんだで好きな場所。
明るい青春から少し離れた感じがして、私には少し特別な場所。
渡り廊下から見える広いグラウンドの見える景色が、ちょっぴり好きだったりする。
時間がある時には、少しグラウンドを眺めながら寄り道して向かうんだけど、今日は止まらずに進む。
圭音を送ってから向かってるから、そんな時間なんてなかった。
いつもより少し早足で向かった部室。
ーーーーー・・・ガラッ・・・
あと残り数えるだけしか開けることのないその扉を開いた。
「お疲れさ・・・」
「香央先輩っ!!!!!!!!!」
「きゃっ・・・」
部室内に1歩、足を踏み入れた時。
「お疲れさま」の声掛けを言い終える前に塞がれた、叫びに近い声と体に受ける衝撃。
「・・・え?あ、彩耶ちゃん?」
気付いたら後輩の加藤彩耶(かとうあや)ちゃんに抱きしめられていた。
「今日香央先輩来ないかと思いました」
私の胸に顔をうずめてそんなことを言う。
そんな彩耶ちゃんに、教室の奥からため息混じりに降りかかる声。
「加藤危ないぞ・・・。うちの大エースモデルに怪我させんなよ?」
そう言ってきたのは顧問の森本先生。
「・・・先生、大エースモデルって大袈裟な。今回のコンテストの写真被写体ってだけじゃないですか」
私はそう言って、申し訳なさそうに俯く彩耶ちゃんに、大丈夫だよって笑いかける。
曇っていた顔がわかりやすく晴れて、私を見た。