冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
『おめでとう、本当におめでとう! 紘奈、由佐さんのことばかり考えていたからさぁ……ああ、もう、よかったよぉ、紘奈の恋が実って!』

興奮している夏穂子の声は大きくて、どうやら由佐さんにも聞こえてしまったらしく、笑われてしまう。
喜んでくれるのはうれしいけれど、落ち着いて夏穂子……!

「俺のことばかり考えていたんだ?」

「……そうですよ。由佐さんにだって、この前言ったでしょう」

電話を終えたわたしを由佐さんはからかうような表情で見てきたので、照れ隠しでツンとしながら答えたら、「かわいいな」と穏やかな声で呟くように言われた。

わたしは彼をぽかん、と見つめて動けなくなる。
由佐さんって……そんなことをさらっと言う人だった?

「ど、どうしたんですか?」

「なにが」

「え……由佐さん、なんだか優しい……? いつも意地悪なのに」

意外だと思っているというのを顔にたっぷり出していると、彼は眉を寄せてわたしを見る。

「俺は思ったことを“素直に”言っただけだ。それに、君は俺の恋人だろ? 優しくするのはあたりまえだ」

呆れたように言った由佐さんはお茶を全部飲んで食べ終わったゴミを持ち、ソファから立ち上がって離れていったが、数歩進んだところで再びこちらに戻ってきて、わたしの唇に軽くキスをしてからまた離れていった。

彼の行動と言葉にときめいてしまったわたしは、口もとを押さえて朝からとても胸がいっぱい。
付き合ったら、こんなふうに変わるんだ。
ぽうっとしていたが、他の社員が出勤してきた声が聞こえてはっとし、慌てて自分の食べたものを片付けた。
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