冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
そして、ファイルを棚へ戻していこうと思ったのだが、その場所がちょうど男性がいるところの棚だ。手足がすらっとしていて爽やかな黒髪に、ぱっちりとした印象的な瞳をしている男性は、近くまでやってきたわたしに優しく声をかけてくれた。

「あ、どうも、その辺に置いてください。俺がやっておくんで」

「すみません……お願いします」

いいのかな、と思いながら段ボールを棚の近くへと置いて、もう一度男性のほうへ振り向いたとき、相手もわたしを見ていたので目が合った。

「……営業課の嶋本さんですよね?」

「はい、そうですけど……」

「俺、浜野《はまの》っていいます。総務で何回か営業に備品の補充で行ってて」

微笑みながらそう言った浜野さんに、わたしは首を傾げる。
確かに、見たことあるような人だけど……どうしてわたしの名前まで知っているのだろう。不思議に思っていると、浜野さんが視線をそらして首の後ろを触った。

「俺が嶋本さんのこと一方的に知っていたんだ。二十五歳で同い年っていうのもあるけど……たまに仕事している姿を見て、いいなって思っていたから」

それって……ええっ!? わたし、聞き違えていないよね? そういうことを言われ慣れていないので、わたしはぽかん、としてしまう。
わたしの反応が薄いので居た堪れなくなったのか、浜野さんは棚のほうへ体を向けてしまった。
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