冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「いきなりごめん。とりあえず、年同じだし仲良くしてくれたら嬉しいな。あー……ていうか、彼氏いる?」

「……えっ、あっ、うん……はい……」

戸惑っていたわたしは、問われたことに首を縦に動かしながら答えた。すると、浜野さんはちらっとこっちを見てショックそうな顔をしたあと、「だよな、やっぱりいるよな」とあからさまに落ち込んだような声でそう言った。

なんだか申し訳ないような気持ちになってしまうが、わたしからはなんて声をかけていいのかわからず気まずい。

「……持っていたファイル、大丈夫だから。俺に任せて」

「あ……よろしくお願いします」

わたしはぺこぺこと頭を下げて、去るタイミングを逃がしてはいけないと思いながら資料室を出た。

まさか、はじめて話した人に『いいなって思っていた』と言われるなんて。
他の部署の男性に声をかけられるのも珍しいのに、本当にまさかの経験だ。前の会社でだって、同期の飲み会で他部署の男性と仲良くなったことはあるけど、気があるようなことは言われたことがなかったし。

そもそも浜野さんは、今日はじめて名前を知った人だ。
こんなこと、あったりするものなんだな。他人事のように思うほど、わたしは驚いていた。
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