冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
急に昼食を一緒になんて、なにを考えているのか。わからないけれどドキドキしながら彼の背中を追いかけ、オフィスを出る。
彼の隣に並んでエレベーターを待っていると、わたしたちの後ろにやってきたふたりの女性社員がコソコソと話はじめた。

「ねぇ、この人って営業事務の……」

「なんでお昼休みに市崎さんと一緒にいるんだろうね」

小さい声で話していても、わたしに聞こえているんですけど。
勤めはじめてからこうして知らない女性社員にちらちらと見られたりすることが結構ある。同じ課で彼と事務的なことだとしても声をかけられて、話していることが羨ましいというのがあるようだ。

あからさまな悪口などを言われたりすることはないけれど、陰でありもしない噂などがたったら嫌だなと思う。「この人も市崎さん狙い?」という声が聞こえてきて、「昼食一緒に食べようって誘ったのかな?」などと、後ろの女性社員たちの話が続いていたとき、

「ところで君さ、また書類内の数字のレイアウト変だから直してくれ。資料はある程度平気だが、重要なところにはもっとわかりやすくしてほしい。それから、データ間違えたらしっかり消せよ。まだ一ヶ月で簡単じゃないのはわかるけど、残っていると他のまで狂うからな」

「……す、すみません」

急に由佐さんのお説教が飛んできて、わたしはうつむいて謝るしかない。忙しい課のために役立とうと、早く仕事を捌こうとしてたまにミスをしてしまい、資料作りがまだ上手にできないのも事実で、データの入力に慣れてはきたけど気をつけないと間違えている。
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