冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
彼の言っていることは全部自分のダメなところなので、素直に認めるしかないのだ。そんなわたしたちのやりとりを見ていた女性社員たちが、「なんだ、ただの部下って感じだね」とほっとしたような声で言っているのが聞こえた。

そうだよ、会社にいるんだからあたりまえでしょう。
心の中でそう思っているとエレベーターがやってきて乗り込んだが、降りるまで彼女たちの言葉が頭の中に残っていて胸のあたりになにかすっきりしないものがあった。


ビルの二階にあるカフェは、テレビなどにも取り上げられているお店で、夏穂子もコーヒーとサンドイッチが美味しいと言っていたのを覚えている。
店内は広く、お昼休憩の時間帯だから人が多くて、お喋りをしながら軽くランチをしている女性たちやテーブルでノートパソコンを開いている男性などがいる。

由佐さんの後ろを歩きながら店内へ入っていくと、女性たちの視線は彼に注がれた。由佐さんと一緒に入ったら目立つことは、ある程度わかっていたことだ。

彼がこのカフェで昼食をとるなんて意外だった。会社にいるときのお昼はほとんど給湯室のテーブルとソファで食べているみたいだったし、人がいて話し声もする空間で休憩するより静かな場所のほうが好きそうな感じだったから。
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