霞村四丁目の郵便屋さん
一緒に昇降口に向かうと、グラウンドに大きな水たまりができているのが見える。


「あーぁ、これはひどいな」


いつの間にか降り始めていた雨は大粒に変わっていて、思わず溜め息が漏れる。

十月下旬ともなれば遠くに見える山々は紅葉を始め、美しい色に染まりつつあるのに、この雨でかすんで見える。


「瑛太くん、傘は?」

「あー、忘れたんだ。朝晴れてただろ?」


天気予報で確認したのに、あの青空に騙されてしまった。


「次のバス、何分かな……」

「えーっと」


みやびに質問されて腕時計を確認すると、駅前から出るバスはあと十五分に迫っている。


「時間がない。急がないと次は一時間後になるぞ」


駅まで急げば十分で行ける。

慌てて玄関を飛び出そうとすると、みやびがサッと傘を差し出した。

まるで朝見た青空のように淡いブルーのその傘は、遥を連想させる。
アイツは水色が好きだった。
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