霞村四丁目の郵便屋さん
「入ってこい」


さとこじがドアの向こうに呼びかけたところ、純一の言った通りかわいい女の子が少しうつむき加減で入ってきた。

肩のラインで切りそろえた髪はつやつやで、いわゆる天使の輪ってやつができている。
顔は小さいくせに目が大きく、まるで人形のようだ。
そして、化粧をしていないはずなのに、唇がほんのりピンクに染まっている。

ひと言でいえば、レベルが高い。


濃紺のセーラー襟に、エンジの線が二本。ネクタイもエンジで胸あてには校章の刺繍。
他の女子と同じなのに、なんとなく上品さを感じるのは、着ている人間の違いだろうか。


「な?」


再び純一が振り向き、それだけ言った。
“かわいかっただろ”と言いたいんだろうけど、主語どころか述語すらない。


「柊(ひいらぎ)みやびさんだ」


さとこじが黒板に『柊』と書き、「みやびはひらがなだそうだ」言いながら頬をゆるめる。
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