霞村四丁目の郵便屋さん
おいおい、さとこじまでかわいいと思ってるんじゃないだろうな。


「ひと言どうぞ」


さとこじに急かされたみやびは、緊張しているのか視線を一瞬上げたものの、またうつむいてしまった。


「柊みやびです。よろしくお願いします」


想像より高い声が俺の鼓膜を揺らした。
新しい情報がなにもない挨拶でも、教室中の視線がみやびに突き刺さっている。


「わからないことは教えてやってくれ。席はとりあえず、田之上(たのうえ)の隣だ」


さとこじがそう言うと、純一が背中のうしろでピースサインを作っている。


「デリケートな女子に余計なことを聞くなよ。特に恒川」


さとこじの言葉に、恒川が「なんで俺?」と反論するので、教室にドカンと笑いが起こる。
『お前が一番聞きそうなんだよ。自覚ないのか?』の笑いだ。


そしてみやびがゆっくりと近づいてきた。

前の席の純一は、どうしてだかいつもより背筋がピンと伸びている。
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