霞村四丁目の郵便屋さん
みやびは俺に一瞬視線を合わせ、小さく頭を下げてから席に着いた。
――遥の、席に。

そのとき、突然心臓がドクンドクンと暴走を始めるから焦る。
不整脈を疑うような異常な感覚に、怖くなったほどだ。


「遥……」


小声でそう口走ってしまったのは、みやびが一瞬遙に見えたから。
遥とは全然見た目も違うのに。


遥は……ほんの少しくせのある髪を肩下二十センチほど伸ばしていて、いつもポニーテールにしていた。
顔は、みやびより幾分かふっくらしていて、もう少し眉が下がっていたような。

ただ、大きな目は同じで、遥に見えたのはそのせいだろうか。


「違うだろ、みやびだ。な?」


ここぞとばかりにみやびに話しかけている純一は、俺には見せたことがないような笑顔を作る。
実に気持ちが悪い。


するとみやびがコクンとうなずいたので、純一はうれしさを隠し切れないといった様子で、一層鼻を膨らませた。
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