君が残してくれたもの
その指が奏でた音楽は、さっき吹奏楽部が演奏していた曲だ。


「それ、さっきの…」


「うん、ラバーズコンチェルト」


とても優しい音で奏でられる音楽も、ピアノを弾く桜樹の消え入りそうな繊細さも。

私の心が捕らわれそうになるのを一瞬感じた。



「ラバーズコンチェルト…」


私が繰り返すと、


「おいで」

桜樹が椅子を開けてくれる。


言われるがまま、椅子に座ると、私の手を鍵盤の上にのせてその上からピアノを弾き始めた。

まるで自分が引いてるような感覚。

心地よく音が響いた。

それと同時に、桜樹の手のぬくもりになんだかソワソワしてしまった。


何度か弾くと、手を止めて、


「この曲には歌詞があるんだよ」


そう言って、弾きながら歌を口ずさむ。

Now I belong to you
From this day until forever
Just love me tenderly
And I'll give to you every part of me
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