君が残してくれたもの
足は踏まれ、肘打ちを喰らい…

放課後デートや合コンとかで盛り上がる人々がいるというのに。

こんな女子高生がいていいのでしょうか。


「うう…」

私の泣き声ではない、これは…

どこから聞こえる?


「ママァ」

足元を見ると、2歳ぐらいの小さな男の子が泣いていた。


「え?ちょっと…ちょっとちょっと、どうしたの?ま、迷子かな?どうしよう…」


辺りを見渡しても、おばちゃんのどアップが並んでいて…

この人ごみから抜けようにも抜けられず。

体と体のぶつかり合い。息が苦しい…

この子はもっとだよね。


「お、おいで…お姉ちゃんでよければ抱っこ…」


男の子に手を伸ばすと必死にしがみついて来た。


なに、この胸がギュッとなる感じ。


「よいっしょ」

153㎝の私が抱き上げたどころで、な状況だけど。

容赦なく人の波が押し寄せる。


「あの、子どもが…いるんであまり押さないで…」

私の蚊の鳴くような声では全く届かず。

必死な形相の主婦を見ながら聞く耳を持たないとはこういうことか、と思い知る私。


「痛、いたたた…ちょっと誰か足踏んでる」


足を踏まれて私は身動きが取れず、揉みくちゃになりながら男の子を抱く腕に力を入れた。
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