君が残してくれたもの
しゃがみこんだ私の前に座って、たぶん他から見えないようにしてくれてる。


「そのままじゃ、帰れないよな…うち来る?」

ウチクル…?

あまりに言われ慣れない初めてのワードに固まる私。


「変な意味じゃないから!あの…そのままで帰るのは危険だから。着替え貸すよ?って感じの意味で」


しどろもどろな海晴くんと、茹でたこのような私。


頭から湯気が出てる。


こんな海晴くん、なんか新鮮だな…


「うん…お願いします」

よくわからないけど頭を深々と下げる私。


「じゃあ、行こうか」

と、出発しようとした海晴くんの背中に頭を打ちつけた。


「え?何?急に止まったら…」

見上げると海晴くんが、背中で私を隠してる。

海晴くんの前を通り過ぎる中年サラリーマン。

なんか、本当に申し訳ない。

「ごめんね…」

私が申し訳なさそうな声を出すと、


「大丈夫…むしろ、よかった。他の奴じゃなくて」

なんて、そんなことを言われたらまたドキドキして熱くなっちゃうよ…


海晴くんの背中が照れてるの、気のせいなのかな?

なんて、思い上がりも甚だしい!

私は自分にペナルティを課すべく、雨の中に出た。
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