君が残してくれたもの
「あ、これで大丈夫かな?」


着たことのない系統の服。

Vネックの黒いカットソーに、デニムのショートパンツ。


私服でこんなに足出したことない。

ちょっと恥ずかしくて、内股になってしまう…


そんな私の仕草に、海晴くんが気づいたのか、

「うん、見た感じは全然大丈夫。でも、ごめんな。姉ちゃんの服どれも派手でさ…これでも1番マシだったから」

申し訳なさそうに、海晴くんが言った。

借りてるのはこっちだし、申し訳ないのも私の方なのに…


海晴くんのお姉ちゃんかぁ。
見てみたいなぁ。

「ううん、大丈夫。ごめんね、すぐ洗濯して明日には返すから」


そう言った私に、優しく微笑んでそっとカップを渡してきた。


「これ、体冷えてるから。あったまって」

中にはレモンティが入っていた。

レモンティの香りが、私の心をふやけさせて、私、ちょっと…

心が震えちゃう。


「ありがと…」

海晴くんが入れてくれたレモンティ、私、広野なずな、今から飲みます。
学校の女子の皆さん、本当にごめんなさい。

味わいながら飲んだ。

心も体もホカホカになったところで、

「じゃあ、そろそろ帰るね。色々、ありがとう」

そう言って立ち上がると、海晴くんも立ち上がった。



「途中まで、送る」


玄関を出ると、さっきの雨が嘘のように晴れていた。


雨が降ったおかげで、より綺麗に見える空。


そんな空に問いかけるように、

「さっきの雨はなんだったの?って感じ」

そう呟くと、

「うん」

と、隣で海晴くんも頷いた。

まるで神様のイタズラのように感じた。

2人立ち尽くして、空を見た。


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