君が残してくれたもの
トイレに立った時だった。


「ねえ、ちょっと」


声をかけてきたのは木内麗香。


「あんた、あのメンバーでいるの辛くないの?だって一人地味じゃん?」


いきなり声をかけて来て、すっごい失礼なこと言ってるんですけど…


なんで、上からなの?


心の中を悟られないよう平然と答えた。


「私、樹里と仲いいから…」


何食わぬ顔を演じる私にぐっと近づいて、


「桜樹くんの前ですっごいぶりっ子してんじゃん。見ててマジでウザいんですけど」


木内麗香の顔面の迫力に、後ずさり…


ぶりっ子って言われたの初めてなんですけど。

ああ。この人、桜樹のことが好きなんだ…


「私、別に桜樹に色目使うようなことしてないよ?」

そういうと、


「桜樹?呼び捨てにしてる時点で調子乗ってんでしょ?」

更に逆鱗に触れてしまったみたい。

興奮して息が荒い木内麗香を見ながら、
「ああ、そうなるのか…」

つぶやくと、


「バカにしてんの?」

すごい形相。

どうすればこの場から立ち去れるの…


「何してんの?」

声がして、城内麗香がビクッとなった。振り返ると、樹里が更にすごい形相で立っている。

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