君が残してくれたもの
「別に…」

木内麗香が負けじと答えると、


「別に何もないなら、人の友達捕まえていびってんじゃないよ!」


樹里の顔…いつも以上に深い眉間のシワ。


城内麗香は、無言でトイレから出て行った。

「何?どうしたの?あの子何なの?」


樹里は私の肩を掴んで、矢継ぎ早に質問してくる。



「いや、よくわかんない」


私の言葉に樹里はため息をついて、


「とにかく、なんかあったら言いなよ」


そう言って、トイレで待っていてくれた。


浮かれている私のことをどんなふうに見ていたのだろう。


難しいな…

誰にも何も思われないでいるっていうのは。


誰かが、不愉快な思いをしたとしても…私、あの子たちと一緒にいたい。

その気持ちだけは固まってる。


手を洗いながら、まっすぐ鏡を見た。

動揺しないで、心を強く持って。


自分に言い聞かせていると、


「そんな顔しない。一人で頑張らなくていいよ、そのために友達がいるんでしょ」

背中をバシッと叩いて、ニッと笑った樹里が鏡越しに私を見る。


「ありがとう」

鏡越しに笑った。


少し、心軽くなる。

不思議だな…見えないものなのに、樹里が半分持ってってくれたみたい。
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