君が残してくれたもの
朝からソワソワが止まらない。

だって、今日は…


ピンポーン

インターホンが鳴って、私は急いで玄関へ向かう。


「お邪魔しまーす」


樹里と桜樹が元気な声で挨拶する姿が小学生のようで笑えた。


「どうぞ。ママは今日は仕事だから」


2人分のスリッパを出すと、2人はそれを履いてパタパタとリビングへ向かった。


小学生みたいな後ろ姿に、1人で笑ってしまう。

と、笑っていたら樹里がクルッと振り返った。


「ちょっと、聞いてよ。ここに来るまでに桜樹が自転車に乗るっていうから貸したらさ、乗れないのよ。もうね、ヨロヨロで本当に怖かった」


樹里が、汗をタオルで拭きながら桜樹の背中をバシッと叩く。


「乗ったらダメだよ!1人の時に。本当に危ないから」

桜樹は背中をさすりながら、ヘヘッと笑った。


その顔を見て、こりゃまた乗るな…と、思った。


まるで親子のような樹里と桜樹に、

「これ、かき氷器なんだけど。これで大丈夫かな」

恐る恐るかき氷器を見せた。


祖母からもらったかき氷器。

手動だし、手入れも大変だけど。


毎年、祖母が作ってくれた。


電動のかき氷器を母が買ってくれたけど、これで作るかき氷の方が数段おいしくて。


結局、これを使っている。


「全然、いい。しかも、このレトロ感といい本格的な感じといい…」


樹里が興奮気味に、かき氷器をあちこちから見ていると、


「これで、かき氷?作るの?どうやって、ね、早くやって見せて」


子どもみたいに急かす桜樹のかわいさに、思わず吹き出す。

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