君が残してくれたもの
桜樹、さっきなんて言おうとしたんだろう…


どんな顔をすればいいのかわからず、オロオロする私の気持ちとは反対に、桜樹は何もなかったようにいつも通り。

だから私もなかったことにして…

かき氷器を回していると、


「代わるよ」

そう言って、海晴くんが代わってくれた。


回す腕のたくましさに、ついよだれが出そうな私を樹里は肘で突っついて、


「あ、シロップ。色々買ってきたの」


シロップをテーブルの上に並べていく。


「メロン、レモン、イチゴ、みぞれ、マンゴー、グレープ、練乳」


おおっと一同が感心したところで、それぞれ気になるシロップを手にする。


「ね、夏休みはこうやって集まってかき氷食べようよ」


樹里が珍しくハイテンション。


「いいね、それ」

桜樹は笑って頷いた。


桜樹がさっき握ってきた少し冷たい手、長い指。

でも、力強い。


男の子は時々、わからない。

時々どころか、8割ぐらい謎。

でも、確かに私の胸をドキドキさせる。
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