君が残してくれたもの
「写真撮ろうよ」

桜樹がそう言って、スマホを出した。

「私撮るよ」

樹里がそう言って桜樹のスマホを持った。


私と、桜樹と海晴くん。

初写真。


「俺のでも撮ってよ」

そう言って、出したスマホを私が受け取ろうとすると、

「なずなちゃんはこっち」

そう言って、海晴くんの隣をポンポンと叩いた。


「は?久保川!私の写真はいらないっていうの?」

樹里が眉間にしわを寄せて、海晴くんからスマホを受け取った。



「あ、今ほんとに撮ってるんだから…動くな、桜樹」

樹里が、もうっと言ってため息をついた。


「俺のだからってふざけんなよ、桜樹」

海晴くんが不機嫌そうに言うと、


「ごめん、ちょっとトイレ行きたくなって」

悪ガキのような顔で笑った。


「なずな、トイレ貸して」

「うん」


私はトイレの場所を教えに席を立った。


「ここがトイレだから」

「ありがと」

立去ろうとした私の腕を掴んで、


「なずなと一緒に写真撮るのも初めてだね。いつでもなずなの顔見れる」


桜樹が私の顔を見て、にっこり笑った。

それは、どういう意味で言ってるの?


友達?仲間?

やっぱり男の子はわからない。

ただ、また私の胸はドキドキして、耳まで赤くなった。

私、こういう時なんて言えばいいのかわからない。

面白い返しも思い浮かばず、ただ、桜樹の顔を見ていた。

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