君が残してくれたもの
下駄を履いて、玄関を出ると夕方と言えど暑い…


でも、下駄の音が心を軽くしてしてくれた。


待ち合わせは神社の前。

カランコロンと、鳴る下駄の音を聞きながらさっきのあっちゃんの言葉を思い出す。

「そういう時、答は出てんの。自分の心の中に、答はあるんだよ」

恋とか…今まで意識したこともなかったから、恋が何なのかさえわからない。

ただ、嬉しいのに緊張したり、笑った顔を見て泣きたくなるような…胸がしめつけられる。

いつだって、一挙一動が気になって…


下心なんかもあって。


「あ、なずなちゃん」

「ほんとだ、なずなだ」


ドキンと、鳴る胸。

会えるの嬉しい、でも、浴衣姿見せるのが恥ずかしい。

ゆっくり振り返ると、浴衣姿の海晴くんと桜樹がいた。


やばい。
こんな贅沢なことがあっていいんでしょうか?


「浴衣、似合ってる」


桜樹の言葉に立ちくらみそうになる。


「そ、そちらこそ」


そっけなくしてしまう、私。

でも、目はしっかり二人を隅々まで見ていますから!


「あ、いたいた」

樹里が小走りしてきた。


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