君が残してくれたもの
「樹里!かわいい」


「なずな、かわいい」


褒めあう女子を疑うような目で見る二人。


「言っとくけど、本心だから」


樹里と私の声がそろう。


「何も言ってないよな?俺たち」


海晴くんがわざとらしく、桜樹と顔を合わせて二人で頷き合ってる。


「ねえ、そんなことより。行こうよ、私たこ焼き食べたい!」


樹里が先に歩き出して、私はその後を急いで追うと、


「わ!」


段差でつまずいた。


グイッと体を支えられていることに気付いて顔を上げると、海晴くんの腕が私の体を支えていた。


「あっぶね」


海晴くんの息が耳にかかってくすぐったい。


「ごめん」


謝る私から腕を離して、海晴くんは腕で自分の顔を隠した。



「気をつけなきゃ。下駄だし人混みだし。ちゃんと見て」


桜樹が真顔で言うから思わず、

「はい」

怒られてる子どもみたいになっちゃう。
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