君が残してくれたもの
「行こうか」


海晴くんの言葉で私達はまた歩き始めた。


「ねえ、これ。欲しい」


桜樹が座り込んでみているものは、


「金魚?」


金魚すくいだ。


「飼うの?桜樹」


私が尋ねると、


「うん」

桜樹は猫みたいに金魚を目で追うのに夢中だ。



「仕方ないな」


袖をまくって意気込んでいるのは樹里。


「やる気満々だね」


私と海晴くんは樹里の勇ましい背中をみつめた。


その樹里の金魚すくいの腕裁きは見事なもので、仙人のような早業で金魚をすくっていく。


「ちょっと...これ以上はいいよ」


桜樹が止めて、金魚すくいが終わった。


「計20匹」


なんだか袋の中窮屈そうに泳ぐ金魚たち。


その袋をじっと見つめる桜樹が、子どもみたいで可愛かった。
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