君が残してくれたもの
「たこ焼き!」


また一人小走りで行く樹里を見失わないように目で追う。


「あいつ、たこ焼きのことしか考えてないな」


呆れ顔で海晴くんは笑った。


「なずなちゃんは?何食べたいの?」

桜樹が、私の顔を覗き込む。


「私は…かき氷食べたい」


「いいね」

海晴くんが笑って、頷いてくれた。


「そろそろ花火始まるよ」

たこ焼きとかき氷を手にした樹里が、腕時計を見ながら言った。


「じゃあ、とっておきの場所で見よう。俺、昔からそこで見てるんだけど、結構穴場なんだよ」


海晴くんの後を私達がついて行くと、そこは工場と工場に挟まれた小さな空き地で、みんながいるところより少し離れた場所。


「俺、ここでよく遊んでて」

幼い頃の海晴くんが馳けまわる姿を想像すると、なんだか笑えた。




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