君が残してくれたもの
「それは、無理だな」


海晴くんもお腹を抱えて笑って、桜樹も、


「そっか…無理だよな」


頭をかきながら笑った。


でもその時の桜樹の顔、なんだか寂しそうだった。


花火が上がるたびに、子どもみたいにキラキラした瞳で花火を見上げる桜樹が、すごく愛おしく感じた。


花火越しに見る海晴くんの横顔が凛々しくて、ついチラ見をしていたのは内緒ですけど。


花火の音が体に響く度に、連鎖したかのように胸がキュンとする。

こんな時間を私が過ごせるなんて、去年は思ってなかった。


「かき氷も食べたし、花火も見たね。今度は何かな」


樹里が団扇でパタパタ扇ぎながら、私を見た。


私も少し考えて、


「なんだろうね、海?」

なんて大胆な提案をしてしまったのも、夏のせいかしら。


「海か!いいね」

海晴くんが目をキラキラさせて言うから、

「何?なんか下心感じるんですけど」


と、樹里につっこまれて、海晴くんは、

「は?違うし」

と、ちょっと本気で言い返すから、余計に…


「怪しい」


と、樹里に疑いをかけられていた。


私達の夏は始まったばかりで、たくさんの思い出を作っていけるはずだった。


ずっと一緒に居られるって、思ってたんだよ。
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