君が残してくれたもの
「なずなちゃん、ちょっと時間いい?」

病院を出て近くにある公園のベンチに腰かけた。


「飲みもの買って来る」


そう言って、海晴くんが自動販売機に走って行った。

桜樹が無事でホッとした。

もう、桜樹の声を聞けなくなるのかと、桜樹の笑った顔をみられなくなるのかと、思った瞬間…
すごく不安で悲しくて、胸が苦しくなった。

ふぅっと息をついて、空を見た。

晴れた目の覚めるような青い空の下で、また明日も桜樹に会える、それがどれほど大切なことか。

海晴くんが、笑ってこっちに走って来てる、この光景がどれほどかけがえのないものか。

私は、心に刻んでいた。

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