君が残してくれたもの
「なぁ…桜樹ってさ、帰国子女にしてはなんか不思議なところ多すぎない?」


海晴くんを見ると、目が合ってしまった。


「うん…自転車に乗れないとか?」

ヨタヨタと運転していた後ろ姿を思い出す。


「うん。この前なんか、海に人が入れるの?って。それに、その辺に雑草が生えてるだけで感動してんだよ」


桜樹はいつもそんなだった。

小さな当たり前のことに、驚いて...



「屈託なく笑うよね、いつも。何見ても感動して驚いて」


花火を見た時の桜樹の様子を思い出して、思わず笑ってしまう。



「そうなんだよな、桜樹見てると本当に飽きないよ」

海晴くんは優しい顔で笑った。


「でも、さ...」


ふと、笑顔が曇った。


「さっき、救急隊員の人から電話があった時、通話履歴が俺しかなかったって言ったんだよ。他の番号も登録されてないって」


それはおかしな話だった。

だって、桜樹は家族と住んでるって言ってたし。

家や家族の番号も登録していないなんて、おかしな話だった。


「桜樹のこと、よく考えたら何も知らないや。私」


海晴くんは、

「俺もだよ」

小さくつぶやいた。
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