君が残してくれたもの
私たちは、お互いに警戒した表情で玄関まで歩いた。


ドアを開けて、中に入った途端二人で息をついた。

言いたいことも聞きたいこともたくさんあったんだけど。


考えがまとまらず無言で息を止めていた。


「とりあえず、今日肉がメインでは...ない、よね?」


久保川くんをまっすぐ見ると、無言で、だけど深く頷いた。


リビングのソファに腰かける久保川くんに、


「お腹はすいてるんだよね?」


肉がメインではないにしても、この肉を見てしまえば食欲を押さえるなんてできない。


「そりゃ、食べ盛りですから」

久保川くんはなぜか自信たっぷりに答えた。


「私、こんな大きな肉焼いたことないのよ。焼き方わかる?」


「...」


無言のままスマホを取り出し、焼き方を検索し始めた。

学校の女の子にこんなのばれたら私、どうなっちゃうんだろう。


想像するだけで、ぞっとした。
< 16 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop