君が残してくれたもの
久保川くんがうちへ来て1時間が過ぎたころ、私達はやっと肉を食すところまで漕ぎ付けた。


いつもは母と2人の食卓テーブル。

今日はなぜか久保川くんが、座ってる。

美味しいものを食べているとき、どうして人はこんなに無口になるのだろう。


「おいしい」

「うまいな、ほんと」

この言葉が出るまでにどのくらいの時間が経ったのだろう。


なんで二人で肉を食べているのかも、もうよくわからないけど。

肉がうまいという現実は確かだ。


「あの、ね...」


私はふとあの机のことを打ち明けたくなった。


今日1日だけでも、私の身の回りでは不思議なことが起こっている。

大体、久保川くんと一緒に肉を食べている、この状況が1番変なんだよね。

しかも、久保川くんの動きを見ていると初めてここへ来たとは思えない。


トイレの場所、テレビのリモコンの位置、教える前に知っているし。

お客さん用のスリッパを自分で出して履いた。


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