君が残してくれたもの
久保川くんがテーブルの上の写真をじっと眺めている様子を、ぼんやり見た。

久保川くんって、こんな顔だったんだ。こんな間近で見ることもなかったし。

だいたい同じクラスになったこともなかった。


私の目が観察モードに切り替わる。

上から徐々に視線を降ろしていく。

まつ毛が長い。

まっすぐな眉毛が顔をきりっとさせる要素なんだね。

高い鼻。

鎖骨が見えた。

華奢ではないけど、ほどよく筋肉質で骨格が私とは違う、男らしい。


手に目線を移すと、大きなゴツゴツした男の子の手だ。

長い指、大きな手のひら。


どのパーツも、初めて見るはずなんだよね。

画像の中では私、すごく近くにいるけど。


あなたは、どのくらい久保川くんを知ってるの?

スマホの画面に問いかける。

そんな笑ってるけど、ちょっとぐらい何か教えてよ。


スマホの中の私に投げかけても、相変わらず笑ったまま。


久保川くんの顔に視線を戻した時、

「とりあえず」

顔を上げた久保川くんと目が合って、急いで目線をそらした。


「どうか、した...?」

久保川くんが真剣な顔で考え事してる時に、私ったら。
顔に手に鎖骨までチェックしちゃって、もう。

自分でもコントロールできない、本能ってやつですか。

ムッツリ...ってなんかの心理テストで言われたな。

あながち外れてない。


「ううん、何にも。とりあえず、何?」

目が泳ぎつつも、話題を急いで変える私を何か言いたげに見ている。

ふっと少し笑ったような気がして、久保川くんに視線を戻した。


「とりあえず、この写真が誰かってことだよ」

無表情に戻ってる。

「でも、これだけじゃわからなくない?」
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