君が残してくれたもの
久保川くんが帰った後も、現実感のない出来事に頭はぼんやりしていた。


あったはずの席、覚えのない画像。


ピアスに茶髪の男の子。

あの白い腕に長い指…

久保川くんとは違う、だいぶ華奢だった。


イケナイ。また私のムッツリが発動してしまった。


それより何より、久保川くんがここに居て肉を一緒に食べたってことが1番ありえないことだ。


久保川くんのことが好きだという女子を私は何人も知っている。

告白したけど、フラれたっていう話も何度か聞いた。

硬派なイメージだから、女子に媚びるタイプでもないし、かと言って不愛想でもない。

いつも自然体なさわやかな男の子。


樹里に話そうか迷うとこだけど…

今はまだ話せないな。

席の謎も未解決だし。


一人で過ごすはずだった時間だったけど。寂しくない食事だったな、今日は。


肉を食べる時の久保川くんの大きな口や、美味しそうな表情がまた脳裏に蘇る。

豪快で、勢いがあって、躊躇がない。


男の子ってあんな風なんだ。

男の人がいない家庭で育って、私は男というものをあまり知らない。

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