君が残してくれたもの
下心が多少あっても恋心はない。

恋はいつか終わるから。

でも、ときめく本能は止められない。

頷きながらカルビを噛みしめる私に、

「味わってるねぇ」


と、母と海晴くんは笑った。


「前にも来たことあったわよね?オウジくんだっけ?」


「何?王子?」


私と海晴くんが首を傾げると、


「あれ?かき氷食べに来てたじゃない」


箸が手から落ちた。


「かき氷?ママ、覚えてるの?」


私と海晴くんが身を乗り出した。


「覚えてる、というか…あら?違う?」


母が、不思議そうな顔をすると、


「僕は、海晴です」


海晴くんが自分で名乗った。


「あ、海晴くんね。あら?オウジくんは誰だったのかしら?」


首を傾げてしばらく考えても、思い出せない様子なのを見て、私達は椅子に座った。
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