君が残してくれたもの
バタバタと家を出る母を見送って、私も学校へと向かう。


空を見上げると、雲一つない青空で思わず目を閉じた。


空気を思い切り吸い込んで、目を開けた。


息を吐きながら、私はまた考える。


オウジのことを。


オウジ…私の何かが共鳴する。


あの日から、私の心は騒がしい。


笹中さんの恋の相手の正体をはっきりさせようという流れの中、なぜ私がこんなにも動揺しちゃってるのか。


わからない…


「おはよ」


声で分かるようになってきた。


「海晴くん、おはよ」


今日もさわやかな風が吹いているよ。


「今日、何出るの?」

今の今まで忘れていたけど、


「短距離走?」

走るんだった。


「へえ、意外」


だから、私はどんなイメージなのよ。


「本当はパン食い競争希望だったんだけど」


「去年、届かなかった子いたね」

その言葉に、ピクリとなる。

彼の顔をチラリと見た時、私は悟った。
彼は確信犯だ。

「いたね…」

ひきつる私の顔を、笑顔で見てる。

さわやかだけど、時々小悪魔。

< 55 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop