君が残してくれたもの
高校生になって、2回目の運動会。


去年はパン食い競争に出た後は、テントの中で眠ってた。

今年もそのつもりで来たんだけど…



「え!家にまで来たの?」

樹里の大きな声が響く。


「声でかい…」

思わず樹里の口元を押さえた。


樹里は体育会系でも、恋バナの方が好きなのか…


そもそも恋でもないけど。


樹里には、本当のことを話さなきゃ、とずっと思っていたから。

ちゃんと話そう。


「実はね…」

今、自分に起きている非現実的な話を樹里にすることにした。


不思議なことの連続で、私自身もわからないことだらけだから。

うまく伝えられるか不安だけど。


私の身に起きたことを樹里に話していくと、樹里の眉間のシワがどんどん深くなっていった。


「え?ちょっと、どういうこと?その、オウジだっけ?」

樹里の眉間のシワが今までで一番深い。

「私も、オウジについては思い出せなくて…でも、久保川くんとオウジらしき人と、写真も撮ってたし」


笹中さんのことは伏せておいた。

相手がわからないとしても、人の恋バナまでは、勝手に話せない。


「樹里…なんか思い出せない?オウジのこと」


樹里だって、名前ぐらいは知ってたはずだ。

すがるように樹里の腕を掴んだ。


「思い出すも何も、知らないよ 。そんな人…」


困惑した様子で、首を振った。
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