君が残してくれたもの
だからと言って他にすることもない私は時間と暇を持て余していた。

ふらっと教室を出ると、隣のクラスの久保川君とすれ違った。


じっと見てくるので、思わず視線をそらした。


久保川海晴(うみはる)。
バスケ部で、さわやかな正統派っぽい感じでなんか女子たちに人気なようだ。

汗かいても涼し気で、なんか嫌みだわ、とか思う私はどこか腐ってんのかな。


あの人の必死な顔なんて、想像もできない...


学校の涼しいスポットは知り尽くしている。

新校舎の裏に建つ旧校舎は音楽、美術、書道の授業で使われている。

その旧校舎の非常階段の日陰になった部分。

地面にはうっすら苔のようなものが張り付いていて、吹奏楽部の自主練のバラバラの音をなんとなく聞き分けながら苔を靴でこすってのけていく。

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