君が残してくれたもの
星菜ちゃんが走った後ろ姿を見送ると、今度は私の番だ。

スタートラインに並ぶと、なんだか緊張する。
小学生の頃と、変わんない…この感じ。

ピストルの音と同時に走り出した。


なんだかドキドキしてちょっとテンションが上がってきて…


みんなの声援も聞こえて、私の足が久しぶりに思い切り地面を蹴っていた。

最後の直線の先に、ゴールテープが見えてそのまま走り込んだ。

ゴールテープを切ってスピードを緩めたとき、後ろから思いもよらないほどの衝撃が来た。

足で踏ん張る間も無く、地面に体を打ち付けた。

後ろから走ってきた子がぶつかって、私は転倒してしまったらしい。

体を起こして座ると、

「ごめん、大丈夫?」

後ろから声をかけられた。


振り返ると、確か海晴くんと同じクラスの、木内麗香だった。


派手なグループの中の1人で、背が高くスタイルがいい。

長い髪を耳にかけて、一瞬、笑った…?

気のせい?

「あ、だい…じょうぶ」


なんだかよくわからないけど、この人とこれ以上話したくない。

避けるように、立ち上がろうとした時、足に痛みが走った。


「痛っ…」

立ち上がれなくて、またしゃがみこんだ。


「は?大げさ…」

あざ笑う木内麗香を、見上げた時。

「大丈夫?手当してもらいに行ったほうがいいよ」


星菜ちゃんが、駆けてくれた。


「何突っ立ってんの?どいて」

木内麗香をにらむと、私の体を支えて立ち上がらせてくれた。


木内麗香は、パッと後ろを向いて足早に歩いて行った。


星菜ちゃん、強い。

可愛いのに、強い。

なんかキュンってしちゃう。



気のせいか周りもざわついていたけど、進行役の人が仕切り直し、次のグループがスタートした。


「今のって…不自然だよね。わざと…とか、まさかね」


星菜ちゃんが声をひそめて言った。


私は、苦笑いして星菜ちゃんに支えてもらいながら保健室へ歩いた。


華奢な体で支えてもらって申し訳ない…

「なずなちゃん?どうしたの?」


声がする方を見ると、海晴くんが驚いた顔で私を見ていた。

< 61 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop