君が残してくれたもの
海晴くんを見るなり、


「あ!久保川くん。なずなちゃんちょっと歩くのきついみたいで。手伝ってくれる?」


星菜ちゃんが呼びかけた。

慌てて、


「大丈夫、大丈夫。歩けるから」


そう言いながら星菜ちゃんから離れようとすると、


「痛…」

やっぱり激痛が走って、よろけた私の腕を海晴くんが掴んだ。


「大丈夫じゃないじゃん」


ヨロヨロしている私をじっと見て、


「お姫様抱っこ、とかさすがに恥ずかしいからおんぶで…」

そう言いながら私の前にしゃがんだ。


大きな背中なのだ。
肩幅だって、あるし。

もちろん、触れたい。
乗っかってみたい。


でも、でもね…


「いやいや。大丈夫だから」

慌てて、断る私に星菜ちゃんが、

「私、次また出なきゃいけなくて。ごめんね。久保川くん、頼んだ!」

星菜ちゃんの威勢のいい声に、

「おう」

と、海晴くんが返事したのを聞き、私はあきらめの境地で海晴くんにおぶさった。


「失礼します」

私の言葉に、海晴くんはふき出して、

「はい、どうぞ」

と言いながら立ち上った。

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