君が残してくれたもの
その後姿を見ながら、私の胸は小さく痛んだ。


海晴くんが悪いわけではない。

私が、もしみんなが納得するような女の子だったら。

嫌がらせなんてしないのだろう。

私が平凡で、あまりに普通で素朴なくせに、海晴くんみたいにみんなから認められてるような人の近くにいることは…みんなの中の常識では許されないのだろう。


それが学校の暗黙のルールのように。

また、そのルールに従わずはみ出すと、また同じことが起きる。


「樹里、海晴くんが悪いわけじゃないよ…優しくしてくれるのは、オウジのことでどこか同じものを共有する仲間みたいになってるだけで。海晴くんは私に特別な感情を持ってるわけじゃないから」


樹里は納得してない。


「久保川は、人当たりのいい奴だけど。あんな風に、特定の誰かのために動くほど、お人よしじゃない」


樹里は私をまっすぐ見て、口をとがらせている。

くせ毛の黒い髪の毛、強気な性格とは反対の少したれ目で、クリッとした瞳。

ちょっとモンチッチに似ててかわいいなあ、と思う。


「さっきおんぶして連れて行ってくれたのは、たまたま星菜ちゃんといるところに居合わせて…」


言いかけた私の言葉を遮るような樹里の言葉。


「たまたまじゃないよ。なずなが転んだ時、私が行こうとしたら隣のテントから久保川が走ってったの私、見たんだよ」


樹里は真面目な顔で、少し声のトーンを落としながら言った。

樹里の勘違い…でしょ?
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