君が残してくれたもの
それに飽きた頃、吹奏楽部の全体練習が始まってなんだか聞き覚えのあるような...

きっとタイトルは横文字だな...って感じの曲が流れだす。

バラバラの音が一つにまとまっていく様がなんとも気持ちよくって。

私は静かに目を閉じた。


「ラバーズコンチェルト…」

不意に口にした曲のタイトルが私の胸の奥をドキンとさせた。

この感情の正体は一体何なのか。

私はなんとも言えない、焦るような思いで、走り出した。

急いで教室へ戻ると、不自然に空いたスペースの前でぼんやり立ち尽くす人影が見えた。

誰…

そっと近づくと、私の気配に気づき振り返ったのは同じクラスの笹中さんだった。


「何…してるの?」

恐る恐る聞くと、

「ここに…誰かの席があったような気がして。でも、みんなそんなの知らないって言うの。おかしいよね」

笑った笹中さんの表情はどこか寂しげだった。
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