君が残してくれたもの
「そうだよね?あったよね、ああよかった。私だけじゃないじゃん。やっぱね、絶対あったんだって。ここに、誰かの席が!」

なんて盛り上がる場面なはずなのに、そういう気持ちになれなくて。

笹中さんと私、ただたち尽くす。

不自然に開いたスペースのように、心の中に何かが欠けてしまった、そんな気がしてならなかった。


私たちが失くしてしまったものって一体何なのか。


夕陽が差し込む教室の中、わけもわからず涙が出そう。


「私、帰るね」


笹中さんも少し涙声で教室を出て行った。


「今日は、スーパー中丸が肉特売...」

日常に戻れと私の脳がそう言っている。


わざと大きな声で、


「今日はスーパー中丸肉特売デー!」

教室の中自分に言い聞かせる。

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