君が残してくれたもの
樹里が言うことには、恋は私の了承も得ずに勝手に始まっているそうな。

樹里が体育委員の集まりに行ってしまったので、一人で廊下を徘徊。


今日、海晴くんとあまり話していない。

昨日の帰り道。


ポケットからなずなのしおりを取り出すと、


「なずな、の花言葉知ってる?」

海晴くんにそう尋ねられた。


「自分の名前だけど…知らないかも。あまり、好きじゃなかったから、この名前」


私の名前は父親がつけたものだった。

なずななんて素朴で、地味な花…


「おかゆにして食べられちゃうからね」

真顔の私の言葉に海晴くんは笑って、


「意外と…花言葉が名前の由来だったりするかもよ?」

そう言った後、また寂しげな顔をした。


そんな表情されるとね、ほっとけないんだよ…


「海晴くん、なんかあった?」

遠回しな聞き方もできない私。


思い切って、聞いてはみたけど…

何故そう思ったのか、と聞かれると答えられないよね。


海晴くんは一瞬、戸惑った顔をしたものの、

「え?なにが?」

と、笑ってはぐらかされた。


笑ってるのに、さびしげなんだよ。

どうして、そんな顔するのか。

どうして私に触れる手を止めてしまったのか。

教えてほしいんだよ…




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