君が残してくれたもの
全てを、捧げてもいいと…

私の脳裏に懐かしい記憶。


雪の降る日。

まだ幼かった私と父がまだ、手なんか繋いで歩いていたころ。

雪道で転んだ私の服がビショビショになった時、父は自分のコートを脱いで私を包んで抱き上げた。

「パパ寒くないの?」

尋ねる私に、

「なずなが温かかったら、パパも温かい。なずなが寂しい時はパパも寂しい。なずなが嬉しい時はパパも嬉しいんだよ」

そう言って頬ずりした父の鼻は赤くなって頰っぺたは冷たかった。

父親からの愛情も、本当なら独り占めできていたはずなのに。

母が仕事で何かあった日、私が寝たあと一人で泣いた夜…母の隣で背中をさすって欲しかった。

ずっと父を求めていた。

会おうと思えば会えたのに。

でも、少しでも無下にされたら…そう思うと、傷つくのが怖かった。
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