君が残してくれたもの
涙が一粒、自分の手に落ちた。

頭の中で、まるで鍵が開くような音がした。


途端にあふれ出す感情。

切なさも喜びも、恋しさも、寂しさも。


駆け抜けるように過ぎた季節が、よみがえってくる。


そんな中、1番、鮮明によみがえるのは、雨の日のあの出来事。


私たちは忘れてはいけないものを忘れてしまっていた。


「オウジ…桜樹…」


枝垂桜の下で、彼は言った。


『ごまかし、今の僕にぴったりな花言葉だ』

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