君が残してくれたもの
母は海外からのお客さんを接待するため、夕食は一人。

今日の私は考える時間がありすぎる。
最近、私の脳内のほとんどをこのことが占めている。

小さくため息をついて、自分の席に鞄を取りに行こうとした時。


「独り言?デカすぎでしょ」

無防備なところに、突然響き渡った声に、ビクッとなった私を見て、少し悪そうな顔で笑った人物がいた。


「久保川...海晴」


こんな顔すんの、この人。

近くでじっくり見たことはなかったけど、この距離で見て整った顔なのだな…と再確認した。


「肉好き?僕も好きなんだよね」

「あ、そう...ですか」


反応に困るんですけど。

あまり話したことないんだけどな。

なんて、少しぎこちなくなる自分を隠すために、あえて素っ気ない声を出した。


「じゃあ」

私は彼の横をすりぬけるようにして廊下に出た。
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