君が残してくれたもの
私はそのまま枝垂桜の下で立ち尽くす。

無抵抗な私にも雨は容赦なく、肩に髪に降り注ぐ。

そのまま泣き崩れそうになるのを、踏ん張って立っていた。


「なずな!何してんの!」


樹里が走ってきて、私の腕を引っ張った。

冷えた腕に樹里の手は暖かく感じた。


「桜樹が…海晴くんが…」


泣いてうまく言葉にならない私の言葉に、樹里はうんうんと頷いて自分のカーディガンを私の肩にかけて、非常階段の踊り場まで肩を抱いたまま走った。

樹里に走らされる私の足は何度ももつれそうになったけど、その都度、樹里が支えてくれた。


「なずな…?」

樹里は私の顔を覗き込んで、呼びかけたけど、泣きじゃくる私に、

「わかってるから。私もちゃんと、思い出したから」

背中をさすりながら頷く。


短い、あっという間に流れていったあの時間のこと…

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