君が残してくれたもの
休み時間ごとに噂の転校生を見に来る子たちが後をたたず、なんとなく人口密度の高い教室内。

女子率は高いけど、男子はなんだかご機嫌ななめ…


「こんなに女の子がいっぱいいるのに、全く嬉しくないなんてな」


「転校生、いいよなぁ。俺も転校生になりてぇ」


「いや、お前転校生でもこうはならねぇよ」


男子の寂しすぎる会話も女子の黄色い声に悲しくもかき消されていく。


ドンマイ、男子達…

心の中でつぶやいた。


しかし…女子の黄色い声も、ここまでくると耳をふさぎたくなる。

あぁ、まだ男子の声の方が低くて堪えられるのかな。

でも、可愛い転校生に男子達が寄ってたかってたら…

女子達の荒れっぷりを想像しただけでも、ゾッとした。


やっぱり、こっちの方がまだ平和なのか…


「あれ?転校生?」

そんな中、男子の声が桜樹に話しかけた。

女子ではなく男子に話しかけられて、月丘くんもビックリした顔。


珍しい光景に、みんな一気に声がする方へ目を向けた。


「うん」

きょとんとした顔で答える月丘くんに、


「おお!じゃあさ、部活入んない?バスケ部!背高いし、な?」


目をキラキラさせて話しかけるのは、久保川海晴。

いきなり勧誘とは、なかなかのやり手ですね。

無邪気な目しちゃって…

頬杖をついたまま冷めた目で見ている樹里の前、私はちょっとだけキュンとなった。
< 92 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop