君が残してくれたもの
その日以降、海晴くんと月丘くんこと、桜樹は一緒にいることが増えた。

バスケ部の練習を見るためにたかる女子の隣を、


「今日は中丸、肉半額デー」

一人、いそいそと下校する私。

家事が好きか、と言われれば特にそういうことはないのだけど。

ただ、家事をすることを理由に、いろんなことから目を背けようとしていたのかもしれない。


「恋だの愛だのよりも、肉。肉は裏切らない」

独り言をブツブツと唱えながら、私はスーパー中丸へと向かう。

そんな日々だった。

私の日々はずっと、こんな風だと思っていた。

それが崩れ始めるきっかけとなったのは、


「バイトしない?」

母からのこの一言だった。

「バイト?」

めんどくさいと、顔に書いている私に、母は怯むことなく話し続ける。


「期間限定だから。花屋のバイト。あっちゃん、いるでしょ。ママの友達の」

母は1人楽しそうに話を続ける。
< 93 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop