風は戦い、恋をする


勝負は一瞬であったーーーー





棍棒が翠を叩くよりも速く

翠は鬼王の顎(あご)を思いっきり蹴りあげた








観客は唖然(あぜん)ーー





一瞬しーーーーーーんと静まり返った謁見の間であったが





「  き、鬼王戦闘不能のため、勝者 風神!!!」
と、獄卒の声がかかり




あっという間にざわめく会場






「まあ、当然じゃなっ」
中央席のエンマは、頬杖をつきながらニヤリと笑ったーーー








続く2回戦、3回戦と翠は勝ち進んだ。



風神の軽やかな動きからか、翠の戦いかたは舞を踊るように軽やかで見た目も綺麗な戦い方であったーーーー














 


試合を見ているエンマの横で何やら不満そうな雷神ーーー





それに気づいたエンマは雷神・他の上神に聞こえるくらいの大きさで話し始めた




「 あやつははじめ、力のコントロールもろくに出来んかった。 

それと言うのも小さな体に有り余りすぎるほどの神力(しんりき)を宿しておったからじゃ。

わしが引きとってから、わしが教えたのは力のコントロールくらいじゃ。


風神が初めて神仏化したのは、雷神族の最年少鳴神(なるかみ:族長)と同じ800歳じゃ……   

あやつもまた天才じゃからの~

一族でひとり生き残ったのも運命(さだめ)かもしれぬな……



                     ……風神が気に入らぬか?鳴神よ…… 」









「  ……あの程度の対戦者ならばあのくらいは普通です。 しかし、風神は女の神です!  やはり納得が…… 『はあ~~~~~~~っ』


っと、雷神の話を遮り、エンマは大きくため息をはく




「 ホント、しょーもないわ! 入隊試験の項目に”女神は禁止”とは書いてへんじゃろ 」





「 しかし! 軍には現在女神はおりません。実力があるのは認めますが、付いていくものがいるかどうか…… それに風紀が乱れます  」






「 乱れるようなら、それまでの精神しかもたない神仏の集まりということじゃ。 それは悲しいのお~ 」



頭をガシガシとかくエンマ

そして続けて言う




「 なぜそこまで女と嫌う?? 

そもそも上に立てる逸材かどうかは、わしらが今分かることではない。 下(部下)を見て分かるものじゃ! 

 わしも志那(シナ:族長)の入隊試験をやめるよう伝えたが、出ると言った。
確かに力はあるのじゃ、やつにかなうほどの入隊志望者は今年はそうおらんじゃろう……

そしてあやつもまだまだ未熟者じゃ、入隊することで学ぶことも多かろう。    

 ……それにお前もじゃ。鳴神。 」 


エンマは席を立ち、その場を後にする

そして、鳴神を背にして言い放つ














「お前の部隊は真面目すぎてつまらんっ  

翠から学べることも多いかもしれぬな。  以上じゃ」



手をヒラヒラさせながらエンマは去っていった。









なんとも言えない表情を浮かべ、雷神は会場の戦いを再び眺めるのであった。
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