イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
「おいおい、久しぶりに帰国した幼馴染になにしにきたはないだろ。トーコ。冷たいな」
直倫はフフッと笑いながら、そのままするりと遠子の肩に腕を回す。
直倫は遠子のことを昔から馴れ馴れしく『トーコ』と呼んだ。
イントネーションが家族とも友人とも違う。
直倫だけの『トーコ』だ。
抱き寄せられた瞬間、そのことを思い出し、遠子の背筋は凍り付いた。
「さわるなっ、離せっ、ウニ! ご主人様の危機だ、助けなさいっ!」
「ワフッ!」
遠子の一言に、ウニが吠えて応える。
だが――
「ウニ、伏せ」
直倫の一言で、ウニは目の色を変え、ぴしゃりとその場に伏せてしまった。
ちなみにウニは十年前、大学受験前に遠子が拾ってきた犬で、当時の獣医が言うには、おそらくゴールデンレトリバーとシベリアンハスキーのミックスではないかということだった。悲しい現実だが、大型犬やミックス犬のブームがあったときに、ウニのように捨てられた子犬がたくさんいたのだという。