イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
「――あの子、会社の人なんだってね」
とりあえず席に座ったが、遠子は直倫の顔を直視できない。
直倫はなにも悪くないのに、モヤモヤするし、自分でただの幼馴染だと言ったくせに、腹が立つ。
自分でもどうしていいかわからない。
「可愛い子……だったね」
(やっぱり直倫だって、男だし……可愛い女の子は、好きだよね……当然……)
いつの間にか運ばれていたコーヒーを飲みながら、そんなことを口走っていた。
けれど直倫はいつもの調子だ。
「なんだ、妬いてるのか」
「はっ、はぁぁっ? ち、違うし、そんなわけないし、なんでそんなっ……」
からかわれていると思った遠子は思わず顔を上げ、唇を尖らせる。
そんな遠子を見て、直倫はフフッと笑い、そっと顔を寄せささやいた。
「違うのか。嬉しかったのに」
「――えっ」
嫉妬されたら、嬉しかった?
「出るか」
直倫はレシートをつかんで立ち上がる。
「あ、うん……!」
バッグをつかみ、直倫の背中を追いかけた。